15年ほど前、私は福岡にある第4師団司令部で第3部長の職についていました。一言で言えば「北部九州四県の防衛警備・災害派遣」を担当するスタッフの長です。当時、防災に関する会議がある度に各自治体の担当者を前に次のようなことを話してました。
「皆さん、ひとたび災害が発生したら、ためらうことなく自衛隊を呼んで下さい。宿泊する建物や三度の食事などは、一切不要です。場所だけ与えられれば全てのことは自分たちでやる、これが自己完結性という自衛隊最大の強みです。」「そういう意味ではこの野外炊具1号は私たちの食事を作る大事な装備であり、重要な機能の一部です。したがって『これだけ貸してくれ』と言われても困りますので、どうかこのあたりの事情をご理解の上、要請して下さい。」
ところが今や、自衛隊の炊き出し支援はごく当たり前の光景となりました。
温食は全て被災者に提供し、自衛隊の食事は缶詰かレトルト。それを食べる姿さえ見せないという徹底ぶりです。長期保存食を食べ続けると大勢の隊員が口内炎になります。やがて食べる行為そのものがストレスになり、体力が奪われていきます。彼らにも充分な食事を与えるべきではないかと考えています。
地域で力を合わせればどこまでできるのか、自衛隊の活動に期待するものは何なのか、冷静に議論する時が来ているのではないかと思います。

野外炊具1号

これが野外炊具1号です。