自由民主党熊本市議団 3番手 光永邦保です。

私からは熊本城復旧整備事業の天守閣部分について質問をしたいと思います。

言うまでもなく、熊本城は熊本市のシンボルであり、「お城の復興なくして本市の復興なし」という思いは全ての人に共通するものだと思います。

その切実な期待の中で、本市は昨年10月に熊本城天守閣復旧整備事業にかかる技術提案・交渉方式の公募型プロポーザルを行いまして、当初2社が応募、しかし技術提案書の提出があったのは1社のみで、結局これを単独で評価審査した結果、大手ゼネコンの大林組に決定しております。HPにはその技術提案書の内容や評価結果の点数、選考委員の方の意見など詳しく掲載されております。

本日、皆さんのお手元にお配りしているのがその技術提案書の一部で、天守閣の内装展示部分の詳しい説明です。

ご覧いただくとわかりますが、地下1階から地上6階までを展示室とし、一筆書き状に導線を設けて、「熊本の歴史」「復興への取り組み」「石垣作りなど体験型のワークショップ」などを作りこむようになっております。提案書によれば、この内装展示だけで7億円。天守閣全体が68億円となっていますから、実に1割以上を占めてます。

私は最初にこれを見た時に、「こんなものは必要ない」と思いまして、執行部に確認したところ、「まだ決まった訳ではない」ということでしたので、改めてこの予算委員会の場できちんとお答えいただこうと思います。

 

  • Q1 天守閣復旧工事に至る手順とその決定時期

経済観光局長にお尋ね致します。

天守閣の内装・展示部分については、今後「どのような手順で」「いつ正式に決定されるのか」を教えて下さい。

 

【経済観光局長 答弁】

天守閣の内装・展示内容については、これまでの展示に係る空調設備等の課題や展示内容に対する指摘等を踏まえ、刷新に向けた検討を行うこととしており、このことにつきましては、国・県等の関係機関はもとより、学識者や関係団体からの意見等も踏まえ昨年末に公表致しました「熊本城復旧基本方針」にも位置付けております。

現在、天守閣の本格復旧工事の準備と並行して、優先交渉権者からの技術提案書をベースに内装・展示内容の検討を進めているところでありまして、今後、特別史跡熊本城跡保存活用委員会における意見や市議会のご意見も踏まえながら、できる限り早い時期に具体的な展示内容等について決定してまいりたいと考えております。

 

手順としては「第三者委員会と市議会の意見を踏まえた上で」、時期については「できるだけ早い時期」にというお答えでした。

早くしたい気持ちは誰もが同じだと思いますが、まずは、しっかりと手順を踏むことをお願いしておきます。

私が問題だと思うのは金額ではありません。天守閣復旧計画の中に熊本市の観光戦略といった大きな考え方がほとんど配慮されていないからです。ただいま経済観光局長からは、昨年末に示した「熊本城復旧基本方針」の中ですでに提案してある、とのことでした。私もこの基本方針は拝見しました。7つの基本方針とそれを具体化した23の主要施策がまとめてあります。その主要施策の中のひとつに「内装・展示内容の刷新」と、あくまで展示更新ありきで述べられ、本当にそれが必要かといった検討がなされた形跡がありません。逆に、熊本市の観光に寄与するような表現、例えば「回遊性をいかに高めるか」といった言葉はどこにも出てきておりません。要するに熊本市の視点からではなく熊本城にだけ目を向けた基本計画であるという印象をもっております。

ご承知のとおり現在の天守閣は明治10年に焼け落ちたあと昭和35年に再建され、それ以降は文字通り熊本市のシンボルとして観光を牽引してきました。平成19年、本丸御殿を復元して来場者は200万人に達し、新幹線効果を狙って多額の予算を投じて城彩苑を作り、中心市街地への観光客の取り込みはまだ始まったばかりです。更に、外国からのお客様の誘致も喫緊の課題です。

お城を取り巻く環境はどんどん変化しております。

ここで提案された天守閣を、一度観光客の立場からイメージしていただきたいと思います。二の丸駐車場にバスで到着されたお客様が歩いてまず天守閣に登り、その後、地上6階から地下1階までリニューアルされた盛りだくさんの展示物を見て回ります。ゆうに1時間半以上はかかるでしょう。これだけ多岐にわたる展示物を見ると、熊本の歴史や文化を大観した気分になり、建物を出たら、もう次は熊本ではなく別のところに足が向くのではないでしょうか。

せっかく熊本城に足を運んでも、ほとんどの時間を天守閣の中で過ごし、次は別の場所に移動する、これでは「観光客の回遊性」どころか「観光客のブラックホール」になってしまいます。

熊本城が日本一たる所以は、その雄大さにあります。その景観とたたずまいが最大の見どころとなっています。それを楽しみにくるお客様をなぜわざわざ狭い空間に長く閉じ込めてしまうのか、私には理解できません。

私は天守閣の内部は必要最小限でいいと考えております。

復興城主の方の名札を地下1階から順番に掲示していくのは面白いと思います。名札が増えることで多くの人が元気付けられるでしょうし、全国から自分の名前を見に来る人がいるかも知れません。

そしてもうひとつ、備えておきたいのが、次の見どころへの親切な案内板です。本物の文化財を見たい方は博物館へ、楽しみながら歴史文化を知りたい方は城彩苑湧々座へ、という感じです。「熊本市には他にも素晴らしい場所があります」というメッセージを発信できれば、十分回遊性の起点になりうると思っております。

観光施設が乏しく、お城しか無かった時代の内装展示を目指す必要は全くありません。真に大切なものは何かについて是非とも議論を深めていただき、無駄のない、目的にかなった復旧復興を進めていただきたいと思います。もちろん、こうしたチェック機能は熊本城に限ったことではありません。

 

  • Q2 今後の桜町開発における回遊性について

改めてお尋ねいたします。熊本城を中心に回遊性を高めていくことは、観光はもとより中心市街地活性化の大きな柱であったと認識しております。今後の桜町の開発を含めて、どのように回遊性を高めていくのか、これまでの経緯を含めこれからの具体的な構想について教えて下さい。前市長の時代からこの問題に関わってこられた高田副市長お願いします。

 

【高田副市長 答弁】

桜町・花畑地区は、本市のシンボルである熊本城と隣接しており、また、中心商店街の骨格ともなる2核3モールの1つの核でもあることから、にぎわいの創出により拠点性を高め、中心市街地の回遊性を向上させることを目的として、(仮称)熊本城ホールを含む桜町地区再開発事業や、シンボルプロムナード等のオープンスペース整備に向け取り組んで参ったところでございます。

今後も「熊本城と庭つづき『まちの大広間』」をコンセプトに、この地区の持つ歴生成や、熊本の水や緑といった豊かな自然が感じられる空間となるよう検討を進め、市民に親しまれることはもとより、熊本城や城彩苑に来られた観光客も必ず訪れたくなる魅力的な場所にしていくことが重要と考えております。

 

ありがとうございました。

ただいまご答弁の中にありました「熊本城と庭続き『まちの大広間』」といったコンセプトや、「歴史性」「豊かな自然」といった要素については、それなりに理解しているつもりですが、いわゆる有識者や専門家と呼ばれる方のご意見はいまひとつピンときません。シンボルプロムナードでよく言われる「あえて作りこまない」という表現も、非常に謎めいて雲をつかむような話に聞こえます。結局のところ「何をどうしたいのか」カチッとしたイメージを打ち出して欲しいと思います。

例えば「回遊性」ですが、私は回遊性を生み出すためには「興味の連鎖」が必要だろうと考えています。まず人の五感に訴え、引き付けておいて、そこからまた次のターゲットへとつなげていくというイメージです。

あくまで例えばの話ですが、お城から下りて行幸橋を渡ると左手に清正公の銅像がありますが、これがお昼の12時になったら台座ごと静かに回転を始めたら、そこはたちまち人気の場所になるでしょう。ドイツのアウグスブルグやミュンヘンにある「からくり時計」のように、時間が来たら動き出すような大小様々な仕掛けがあれば、とても面白い効果を生むと思います。また熊本にちなんだ歴史上の人物のオブジェを配置して、例えば夏目漱石であればその前に机と椅子を置いて、まるで漱石先生の講義を受けているような写真が撮れれば、これまたとても喜ばれると思います。とにかく想像しただけでも楽しくなるような発想が欲しいと思います。

シンボルプロムナードはわずか500m。お城を出てからの距離を含めると約1kmです。これを誰もが歩きたくなるような智恵を結集して欲しいと思います。この全体の大きなアイデアを確立した上で、先ほどの天守閣の内装部分を検討していただきたいと思います。

 

  • Q3 観光戦略と天守閣復旧工事の進め方について 

大西市長にお尋ねします。

「回遊性を高める等本市の観光戦略をしっかり確立した上で、議会と十分連携を図りながら、天守閣復旧工事を進めていく」、この考え方で間違いないでしょうか。改めて市長としてのお考えを聞かせ下さい。

 

【大西市長 答弁】

「熊本市震災復興計画」では、「くまもとの元気・活力」を創り出す観光分野の施策として、「震災からの再生をアピールし集客を図る国内外へのシティセールスと観光戦略の展開」を掲げ、熊本城の復旧過程が見える仕掛けづくりなどに取り組むこととしております。

中心市街地の回遊性については、平成22年に策定した「熊本市観光振興計画」において、熊本城から城彩苑を経て中心市街地へとつながる回遊性の強化を本市観光の主要な取組みの一つとして掲げておりますが、この方針は、震災後の観光戦略において、さらに重要性が増していると認識しております。

そこで、先ほど答弁にもありましたように、中心市街地の更なる魅力向上による回遊性強化の観点から、桜町・花畑地区において、(仮称)熊本城ホールを含めた市街地再開発事業やオープンスペース、花畑・辛島公園など、エリア全体の一体的な整備を行うこととしております。

今後、熊本城天守閣復旧工事の進展に伴い、国内外から多くの観光客が訪れることが見込まれますが、桜町・花畑地区全体の整備による魅力の向上とともに、商店街とのソフト面での連携を強化し、観光客の回遊性を高め、中心市街地での飲食や宿泊等につなげていくことで、本市地域経済の活性化と「くまもとの元気・活力」の創出を図ってまいりたいと考えております。

また、ただいまいろいろとお話しを聞いておりまして、「回遊性」という観点から申しますと例えば県立美術館には永青文庫の分館がございますし、あるいは先ほどお話がありました博物館とか、様々な魅力がございます。ですからそういったものを様々な形で全体的な魅力を伝えていくような、例えば天守閣に限らず、天守閣を見たら、またもう一日泊まっていただいてですね、更にその周辺を回っていただくくらいのですね、そういう幅広い戦略が必要ではないかなあと、話をお聞きしながら様々考えたところでございます。そういう意味におきましては今光永議員からありましたように、有力なご提案がございましたけれども、議会の方のご意見をうかがいながら、そして熊本城を少しでも多くの方々に見に来ていただけるように、回遊性などにも努力してまいりたいと思います。

 

ありがとうございました。

様々なアイデアが必要ですし、一日見ていただいて更に泊まっていただくというのは、それはそれで相当な工夫がいると思います。

復興行政はどうしても縦割りになってしまいます。これまで、熊本城管理事務所の方を始めお城に関わる方々がただいま市長が述べられましたような大きな考え方に基づいて主動的に進めていただきたいと思います。

政令都市の中で最も自主財源が乏しいのが本市です。その稼ぐ力をつけるためには現在所有している観光資源を有効に活用する以外に道はないと思いっております。

複数の事業がばらばらに進められるのではなく、本市の経済活性化という大きな目標に向けて収斂していくことを切に要望し、私の質問を終了致します。

(以上)